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問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論 「文芸新書」 エマニュエル・トッド

要約

世界中でネイション回帰が進んでいる。特にグローバル化を推し進めてきた英米においてこの現象が顕著であり、米国ではトランプ大統領の誕生、英国においては国民投票でEU脱退が決定した。なぜ世界はグローバル化に疲れ、ネイション回帰へ向かっているのか。そして、英国のEU脱退は世界に何を引き起こすのか。ソ連崩壊やアラブの春を予言した著者による代表的著作。

 

概要、その他雑記

 

世界各国がグローバリゼーションに苦しめられる中、英国のEU離脱国民投票で可決された。

 

では、英国がEUを離脱した後、ヨーロッパ社会では何が起こるだろうか。

 

筆者はドイツによるEU支配が進むと言う

というのも、現在ドイツは徹底的な自由貿易主義、移民をベースとした豊富な労働力により圧倒的な経済力を保っているからである。

 

しかしドイツによるこのEU支配が長期に渡って続くかには疑問を投げかけている。

理由としてはドイツの出生率低下、また、それが付随的に引き起こす移民受け入れによる問題が挙げられる。

 

ドイツは先進国中で日本と並んでトップレベルに出生率が低く、この後、人口不足に悩まされることは間違いないだろう。

そこでドイツが行うのが移民の確保である。移民を受け入れることで出生率低下による労働力不足をカバーすると聞けば一見理にかなっているようにも聞こえるが、そこには移民が社会に適合できるかという危険性も含まれる。

 

実際、現在ドイツがトルコから受け入れている移民はロシアやギリシャからの移民に比べて社会にうまく適合できていないと筆者は語る。

理由としてはいくつか考えられるが一つにはトルコの結婚、家族制度にある。

というのもトルコ人は内婚(いとこ同士の結婚)を認めるため比較的集団として閉じた社会を形成する可能性があるからである。

 

さらには、メルケルが受け入れを検討しているシリア難民は内婚率が35パーセントほどであり、より閉じた社会を作り上げる可能性もあるだろう。

 

そのような閉じだ集団が増加していった時、国家のまとまりは失われていくかもしれない。そして、このような危険性を持つドイツがもはやEUの支配者でなくなった時、再びヨーロッパに無秩序が訪れることも否定はできない。

#筆者は移民の受け入れを否定しているわけではなく、経済発展のためにやみくもに受け入れることに懐疑的である。

ところで、日本でも労働力不足の是正のためにも移民を受け入れるべきだと言う意見もあるがどうだろうか。

たしかに文化、生活様式が比較的に通ったアジア圏、特に中国、韓国からは受け入れても良いかもしれない。むしろもっと受け入れるべきかもしれない。しかし、これが中東、アフリカからの移民だと社会への適合という意味では厳しいかもしれない。

倫理的、経済的に合理、論理的であることが必ずしも社会の繁栄のためによいものとは限らないだろう。

 

もし移民の受け入れが労働力不足を補うためだけであるならば、日本の強みであるテクノロジーを生かしロボットなどによる自動化を進め、労働力不足を補うほうが良いかもしれない。