供給過剰社会での理想のマーケティング戦略とは。マーケティングを学ぶ 「ちくま新書」 石井淳蔵

概要

現代は供給過剰社会であると筆者は言う。そこではあらゆるものの品質が向上、均質化するため製品技術がそのまま競争優位にはならない。
そして、このような社会ではひたすらに高品質の商品を作っても売り上げが伸びるとはかぎらない。そのような時代のマーケティング戦略のカギとして筆者は顧客とのコミュニケーションを挙げる。具体例豊富で非常に体系立てられた内容となっているのでマーケティングへの導入としておすすめ。


要約、その他雑記

現在は製品の品質が顧客が利用できるレベルをはるかに上回っているという。
家電製品や携帯電話を手にとって見ればわかるが、そこには必要異常に機能が詰め込められすぎているようにも思える

このような社会では、ひたすらと製品品質を追い求める方法では顧客からの支持を集められない。なぜなら、顧客にとって目新しい商品は以前よりも減少しているのと同時に、多くの企業が同レベルの優れた製品技術を持つことで製品技術が競争優位にならなくなっているからである。

では、このような社会ではどのようなマーケティング戦略が有効なのか。

筆者はそれは顧客とのコミュニケーションを通した製品開発、つまり、生活者思考であり、企業は常に「誰が使うか」、「何が欲しいか」を考慮する必要があると言う。

本書では具体的にSTPというマーケティング戦略を用いて顧客視点の観点から商品開発を進め成功した、新潟県の青よし製作所、アート引越しセンター、スカンジナヴィア航空、パナソニックのコンピュータ部門などを紹介している。

いずれの企業も市場を細分化しターゲットを絞り、正しいポジショニングを取ることで成功し、その際 ターゲットが何を求めているのかを常に意識していた

#顧客とのコミュニケーションを育む場は企業によって異なる。例えば電気や車、食料品メーカーなどでは店頭、チャネル(販売店)が挙げられる。


以下は余談だが、チャネルの多様化が日本の家電メーカー衰退に拍車をかけているかもしれない。
というのも、ひと昔前ならば、ある家電メーカーの商品を購入したければそのメーカー独自のチャネルに行けば手に入れることができた。そこには、他社商品と比べるという概念が今よりは薄かったかもしれない。

しかし、ヨドバシカメラビッグカメラなど家電量販店の登場、さらには、アマゾンなどインターネット通販業界が台頭することによって、メーカーは嫌でも他メーカーとの比較を受けるようになった。
そこで顧客に購入してもらうためには、徹底的な価格競争力や定期的な新製品の開発、広い製品ラインアップが不可欠になる。その結果、激しい価格競争に巻き込まれ企業力は消耗している。
価格で流れてくる顧客は価格でどこかへ行ってしまう可能性が高く、安定した買い手にはなりにくい。真に安定した買い手とするためには価格以外のところでも顧客からの信頼を得ることが不可欠であり、やはりその時に必要なのは消費者視点の商品開発となる。
#なかでも最も影響力があるのはアマゾンであり圧倒的な品揃えと低価格設定により市場を圧巻している。家電量販店で商品を見定め、アマゾンなど通販サイトで購入するといったことが普通に起こっており、そこでは家電量販店はただの「ショールームとなってしまっている。
しかし、家電量販店もただ黙って見過ごしているわけではない。ヨドバシカメラなどはインターネット通販にも力を入れ、その際、独自の宅配網を持つことでより多様な宅配時間を設定し(これも顧客中心主義と言える)アマゾンなどに対抗している。



今回は一章分のみの紹介としました。
この他にも豊富な成功、失敗例をもとに、この過剰供給社会におけるマーケティング戦略のあり方について述べられているので是非おすすめします。