就活生必読、企業研究を深めよう。 決算書はここだけ読め!キャッシュ・フロー計算書編 「講談社現代新書」前川修満

 

概要

カネが主役となるデフレ時代では企業のカネの流れを読み取ることがより重要になってくる。企業のカネの流れを読み取れるものそれはキャッシュフロー書である。この本では国内有名企業を例に、数点に絞ったキャッシュフロー書の読み方を提示しているため会計初心者にもかなりおすすめ。就活生はキャッシュフロー書やBS、PLなどを読み込んでおくことで企業研究が深まるだろう。

 

要約、その他雑記

まず前提としてインフレとはモノの価値が上がりカネの価値が下がること、デフレとはその逆である。まったく同じモノが100円から150円に上がったらインフレ状態。まったく同じモノの値段が上がっているのでモノの価値が上がっているのが見て取れる。

 

インフレ時においてはモノの価値が上がるのでモノを多く所有するようになる、持っているモノの価値が上がって得をするので事業でできた金はすぐモノに変えるようになる、さらにモノの価値が上がりその人は富を得るという好循環が生まれる。

 

デフレが進む現在においてはこれと同じやり方で富を得ることができるか?

 

答えはもちろんNoである。

 

それはバブル崩壊による多くの企業倒産が証明している。

この時代多くの企業は借入金で資産を集め大きな実物資産を保有していた。これはインフレ時代なら利益を生んだものの一度バブルが崩壊しデフレが進むと会社にとって多量のモノをもつことは高負担になる(デフレではモノの価値が下がるから)

 

したがって、この時代の企業戦略としては借入金を増やしすぎることなく(カネの価値が上がっているので借金は以前より高負担となる)モノも持ちすぎない、さらには、事業活動で手持ちのカネを増やしていくことが求められる。

 

カネの価値が上がるデフレ時代においてはカネが主役となる。したがって、カネを流れを示すキャッシュフロー書を読めるようになることは不可欠なのである。

キャッシュフロー書とは主に営業、投資、財務キャッシュフロー部門からなるが、まず営業、投資部門に着目することが重要である。

#どの分野でもプラスなら入ってくる金額のほうが多いマイナスだと出ていくお金のほうが大きいということになる。

 

営業CFと投資CFを合わせたものがフリーキャッシュフローであり、簡単に言うと会社が自由に使えるカネとなる。営業CFが投資CFよりも大きい状況(会社が稼ぐ金のほうが会社が事業を維持するためにでていく金より大きい)では営業であげた利益を投資に充てて事業を拡大し、さらには残りのカネで借入金返済などを行えるので理想的である。

 

その反対となる場合ももちろんある。例えば一時期の東芝では営業CFよりも投資CFのほうがかなり大きいという状況が続いていた。これは競合他社であるサムスンの動きを見てのことであった。というのも、東芝が強みとする電子デバイス分野においてサムスンが積極投資を発表、それに対抗するためにも強硬的な投資をせざるを得なかったためである。一気にシェアを拡大し競合他社である東芝を振り落とそうとするサムスンに対抗するためにはやむを得なかったともいえる。

その結果、巨額の債務、さらにはM&A問題などが重なり現在厳しい状況に置かれている。

#ちなみに、東芝日本郵政といずれもある意味「お荷物」ともいえる海外企業の大型買収を行った結果、多額の赤字を計上する事態に陥っている。市場を広げる意味で攻めに出たのかもしれないが、やみくもな海外進出は仇となることがみてとれる。

 

 

以上のようにキャッシュフロー書を読み込むだけでも様々な企業戦略が見て取れるのでぜひこの本で少し勉強してみることをお勧めする。